
弁護士や税理士、公認会計士らが連携して、経営危機に陥っている中小企業の立て直しを支援する、民間組織「事業再生支援協会(略称SRC)」(本部事務局=東京都新宿区)が五月に設立された。八月には東京、京都に次ぎ、名古屋支部も開設されている。SRCでは中小企業の事業再生を進めると同時に、ターンアラウンド・マネージャー(企業再生請負人)の養成にも取り組むなど、厳しい経営環境が続く中小企業の復活と地域経済の安定に向けて活動を開始した。立川昭吾理事長に、設立の狙いや今後の展開などを聞いた。
-SRC発足の経緯とその狙いは。
「私自身、バブル崩壊後、中小企業の倒産回避や救済事業に取り組んでいたが、独自で確立した再生方法が、事業再生の先進国である米国のターンアラウンドと方法が同じで、確かな手法であると認識した。中小企業を取り巻く経営環境が厳しく、今後もこうした事業再生に対するニーズは
高まると予想される。大企業の再生は国や金融機関が支援してるが、日本経済を支える中小企業の事業再生は、実態に即したものではなく、中小企業を救うためにも必要である、と判断した」
-SRCの取り組む内容は。
「事業再生支援や企業再編の在り方、中小企業金融の研究など中小企業側にたった事業再生の手法を研究すると同時に、事業再生をビジネスと位置付ける。また、極端に不足している中小企業版ターンアラウンド・マネージャーを養成し”事業再生コンサルタント養成講座”を開講するなど、再生を担う人材の養成を手がけていきたい」
-設立以降、相次いで支部を開設しているが、全国的なネットワーク構築は。
「神戸を皮切りにして東京、京都、名古屋に支部を設置した。このほか、新潟や福岡、松山、仙台などからも支部立ち上げを要望する声があがっているが、名古屋支部開設で当面は凍結する。ターンアラウンド・マネージャーを養成するには最低一年間は必要であり、養成する人材も現段階では少人数と限られているため、これからの一
年間は支部開設を凍結せざるを得ない。人材が育てば、再開していく方針」
-人材の養成について。
「中小企業の事業再生は一朝一夕ではいかない。中小企業版ターンアラウンド・マネージャーには、専門的知識と五十業種程度の経験をもち、地理感をもっていることが求められる。こうした人材が数人のチームを組んで取り組んでこそ、再生に結びついていく。また、人材を養成するには基礎的な訓練のほか、モラルを身に付けていることが重要。その施策として養成学校や塾のような機構・組織を設け、一年間かけて”熟成”していく必要がある」
-八月に設立した名古屋支部の状況を。
「名古屋支部は愛知、岐阜、三重県の東海三県をエリアとして五月に設立したが、すでに十数件の問い合わせが舞い込んでいる。なかには、事業再生を要望する事業者からの声もある。八月二十八日には支部総会を開き、組織体制を整備し、実際に活動をスタートさせた」